マグネットベースの選び方|作業灯とゲージの固定で比較
マグネットベースの仕様欄にある「吸着力60N」は、平らな鉄板に吸着面を密着させ、真上へ引き剥がすときに必要な力を示した数値です。1kgfが約9.8Nなので、60Nは6kg強を持ち上げるのと同じ力に相当します。
ただし、この数字どおりの余裕が作業台の上で出ることはほとんどありません。
アームを伸ばした先にダイヤルゲージや作業灯を付けると、てこの作用で吸着面のふちに力が集中し、表示よりずっと軽い荷物でベースの端が浮き始めます。
ねじの規格が合わずに、買ってから取り付けられないという行き違いも起こります。
本記事では、吸着力Nの読み方・スイッチ式と常時磁力の違い・ねじ規格の合わせ方・アーム長から必要な吸着力を見積もる手順を解説します。

マグネット党編集部
マグネットの選び方を用途別に解説。100均・収納・スマホ・車・DIY・印刷用まで、耐荷重と貼る面で比較できます。仕様はメーカー公式や公的機関の資料で確認し、時点を明記しています。
※本記事はAIの補助を得て作成し編集部が校正しています。
マグネットベースの吸着力Nは、平らな鉄板に真上から引き剥がした値
マグネットベースは、磁石を鉄のケースに収めて、磁力を吸着面の側だけに集めた台座です。
上面か側面に雌ねじが切られていて、そこへアーム、ゲージホルダー、照明、カメラマウントなどを取り付けて使います。
ダイヤルゲージ用のものはマグネットスタンド、照明や小物用のものはマグネットホルダーと呼ばれることもありますが、磁力で機械や定盤に固定する台座という点は共通しています。
仕様表に載る数値のうち、いちばん先に見るのが吸着力です。
単位はN(ニュートン)で、kgf(キログラム重)を併記した製品もあります。
ここで気をつけたいのが、マグネットフックの「耐荷重3kg」とは別の数字だということです。
吸着力は吸着面を垂直に引き剥がすのに要る力で、耐荷重はぶら下げられる重さを示します。
前者が大きくても、すべる向きの力には弱いという関係は変わりません。
この違いは磁石製品全般に共通する話で、号数表示と耐荷重の関係は強力マグネットの選び方で解説しています。
マグネットベースは3タイプ、吸着面の形で置ける場所が変わる
吸着力の数値が同じでも、磁力の入切ができるかどうかと、吸着面の形で使い勝手が分かれます。市販品はおおむね次の3タイプです。
| タイプ | 吸着面と操作 | 向いている用途 |
|---|---|---|
| 常時磁力タイプ | スイッチがなく、常に磁力が出ています。外すときは横へずらして引き剥がします | 作業灯、スマホホルダー、小型のカメラマウントなど、比較的軽いものの固定 |
| ON/OFF切替タイプ | レバーやノブで磁力を入切します。切ってから置き、位置を決めてから入れます | ダイヤルゲージの支持、旋盤やフライス盤への仮固定。吸着力の大きい製品はこのタイプが主流です |
| V溝付きタイプ | 吸着面に溝があり、平面だけでなく丸棒やパイプの外周にも当たります | 丸材を扱う旋盤まわり、配管や支柱への取り付け |
切替式は、置いた瞬間に磁力が働かないぶん位置決めが楽で、外すときも力が要りません。
吸着力の大きい常時磁力タイプを鉄の定盤に平らに置くと、指が入らずに外せなくなることがあり、取扱説明書で引き剥がし方の注意を示している製品もあります。
強い磁石を扱うときの注意点は超強力マグネットの取り扱いで解説しています。
アームを伸ばすほど、表示の吸着力は当てにできなくなる
吸着力の試験は、吸着面全体を鉄板に密着させ、面に対して垂直に引く条件で行われます。
ところがマグネットベースの実際の使い方は、この条件とほぼ逆です。
ベースからアームを立てて横へ伸ばし、その先端に重さがぶら下がるため、荷重は面の中心ではなく、アームを倒す向きのモーメントとして働きます。
結果として、吸着面のうちアームから遠い側のふちだけが持ち上がる形で剥がれ始めます。
面全体で受ける力ではなく、ふちの一点を起点にしたこじりになるので、60Nの製品に6kgをぶら下げられるという読み方は成り立ちません。
アームの長さが2倍になれば、先端の重さが同じでもベースを倒そうとする力は2倍です。
見積もりの感覚としては、ダイヤルゲージのように数百グラムのものでも、アームを最大まで伸ばして測定子を押し当てるなら、吸着力に一桁の余裕を持たせておくと安心です。ベースを機械の側面に付けて水平方向の面で支える場合は、重力が吸着面をすべらせる向きに働くため、垂直の面で使うときよりさらに余裕が必要になります。
マグネットベース選びは、貼る面・必要な吸着力・ねじの3段で決まる
吸着する面に鉄が入っているかを最初に確かめる
磁力で固定する道具なので、相手の面に鉄が入っていなければ吸着力の数値には意味がありません。
鋳鉄の定盤や機械の本体はまず問題ありませんが、ステンレスは種類によって磁石が付くものと付かないものがあります。
アルミの治具、樹脂カバー、ガラス天板には付きません。
判断に迷う面は、小さな磁石を当てて手応えを見るのが確実です。
付かない面に固定したいときは、鉄板を貼って吸着面を作る方法があり、板の厚みと保持力の関係はマグネットプレートの使い方で解説しています。
ねじ規格は取り付ける側から逆算する
ベース本体のねじ穴は、工具やゲージ用ならM6・M8・M10などのメートルねじ、カメラや撮影機材向けなら1/4インチ(三脚ねじ)が使われることが多いです。
ここが合わないとアダプターを足すことになり、継ぎ目が増えて剛性が落ちます。
載せたい機器の取り付け部の規格を先に調べ、その規格を持つベースを選ぶ順番にしてください。
あわせて吸着面の寸法も見ておくと、狭い機械の隙間に入るかどうかの判断ができます。
使う環境から素材と被覆を選ぶ
切削油や水がかかる場所では、ケースの防錆処理とねじ穴の状態が寿命を左右します。
磁石そのものにも違いがあり、フェライト磁石は磁力が穏やかなかわりに錆びにくく、ネオジム磁石は同じ体積で強い力が出る反面、被覆が欠けた部分から錆びていきます。
ネオジムの吸着力の目安はネオジムマグネットの解説で扱っています。
塗装面や仕上げ面に当てるなら、吸着面にゴムや樹脂の被覆があるタイプを選ぶと傷が付きにくくなります。
同じ「60N」でも、試験に使う鉄板が違えば数値は変わる
吸着力の測定条件は、メーカーごとに細部が違います。
試験片の鋼種と厚み、表面の仕上げ、引く速度のどれが変わっても数値は動きます。
とくに鉄板の厚みは影響が大きく、磁束を通しきれない薄い板では、厚い板で測った値より小さくなります。
塗装が乗っていれば、その厚みのぶん磁石と鉄の距離が空くので、さらに下がります。
そのため、A社の60NとB社の60Nを同じ性能として比べることはできません。
比較の助けになるのは、吸着面の面積と製品の質量、そして磁石の種類です。
面積が広いほど、モーメントに対して倒れにくくなります。
質量が大きい製品は磁石も大きい傾向があり、ケースの剛性も高いことが多いです。
仕様が横並びで判断に困るときは、同じメーカーの製品同士で数値を比べたほうが結論が出ます。
吸着力が足りないマグネットベースは、測定値のずれと跡になって表れる
選び間違いは、いきなり落下という形で出るわけではありません。
ダイヤルゲージの支持に使った場合、ベースがわずかに動くだけで測定値が変わってしまい、指針が戻らなくなったり、同じ場所を測るたびに数値が違ったりします。
作業灯なら、振動で少しずつずれて照らす向きが変わります。
磁力が強すぎる側の失敗もあり、薄い板金に強力なベースを付けると、外すときに板をたわませたり、塗装面に円形の跡を残したりします。
買う前に確認できる場所は限られています。
パッケージには吸着力とねじサイズ、吸着面の寸法が書かれ、本体にも吸着力を刻印した製品があります。
通販の商品ページでは、仕様表の吸着力・ねじ規格・質量・吸着面寸法の4項目を見てください。
写真だけでは吸着面が平らなのかV溝なのかまでは分かりませんから、正面からの写真か寸法図があるページを選ぶほうが確実です。
粘着で固定する製品との併用を考えているなら、粘着側の限界も別に確かめる必要があり、その考え方はマグネット用両面テープの解説で扱っています。
よくある質問
マグネットベースはステンレスの定盤にも付きますか
ステンレスは種類によって磁石が付くものと付かないものがあるので、「ステンレスだから付く」とも「付かない」とも言えません。
持っている小さな磁石を数か所に当ててみて、手応えがあるかを確かめてください。
手応えが弱い面では、カタログの吸着力を大きく下回ります。
吸着力が強いと外せなくなりませんか
吸着面を鉄板に平らに密着させたまま真上に引くのが、いちばん力が要る外し方です。
ON/OFF切替タイプなら磁力を切れば手で持ち上げられます。
常時磁力タイプは、端を軸にして横へずらすか、片側を浮かせてこじる形で剥がすと軽い力で外せます。
無理に指を掛けて引くと、外れた勢いで手をぶつけるおそれがあります。
車のボディやスチール棚に使っても大丈夫ですか
鉄板であれば吸着はしますが、塗装面では磁石と鉄の間に塗膜の厚みが入るため、吸着力は仕様値より落ちます。
砂や金属粉を挟んだまま押し付けると、その粒が塗装を削ります。
吸着面がゴムや樹脂で被覆されたタイプを選び、面を拭いてから置いてください。
薄い板金は、外すときにたわむことがあるので、吸着力に余裕のありすぎる製品は避けたほうが無難です。
まとめ
マグネットベースの吸着力Nは、平らな鉄板に密着させて垂直に引き剥がした条件の数値なので、アームを伸ばして使う実際の場面では、表示よりずっと軽い荷重で端が浮き始めます。
数値だけを頼りにせず、吸着面の面積とアーム長を合わせて考え、余裕を大きく取るのが失敗の少ない選び方です。
相手の面に鉄が入っているかを先に確かめ、載せる機器のねじ規格からベースを逆算すれば、迷う要素は磁力の入切と被覆の有無だけに絞れます。
ぜひ本記事の3タイプの比較表と、貼る面・必要な吸着力・ねじの3段の手順を参考に、自分の作業台に合うマグネットベースを選んでください。




